残業・残業代問題でお困りの経営者・人事労務ご担当者様へ  〜ここに注意!労務管理の現場で見かける残業対策の落とし穴〜

《《 経営者のための残業対策講座 》》

このたびは、当サイト「経営者のための残業対策講座」にお越し下さいました有り難うございました。
当サイトでは、サービス残業残業代の支払い労基署等による指導監督その他残業および残業代の問題でお困りの経営者様および人事労務ご担当者様にご覧頂くことを念頭に、企業の顧問社会保険労務士としての視点から、会社として最小限押さえておくべき残業・残業代に関する知識や具体的対応策について簡潔に記載し、解説を試みています。日常の残業・残業代管理にお役立ていただければ幸いです。


社会保険労務士中村亨事務所 :
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○企業の顧問社労士として一言 ○古くて新しい残業問題 ○負い目のない残業対策とは
○残業・残業代に関する基礎知識 ○残業・残業代の例外 ○違反した場合のペナルティ ○残業に潜むもう一つのリスク
○残業・残業代Q&A ○残業対策コンサルティング案内 ○中村亨事務所ホームページ ○サイトマップ

第4章 ご存じですか?残業・残業代に関する基礎知識

以下では、残業に関する基礎知識について解説をしたいと思います。

厳密にいえば残業という言葉は法律用語ではなく、法定内外の時間外労働のみならず、休日労働や深夜業などを総称していうこともありますが、ここでは特に断りのない限り、法定内外の時間外労働のことをいいます。


1.残業とは

通常は、「所定労働時間」を超えて行われる労働のことをいいます。

「所定労働時間」とは雇用契約上、労働者が、始業時刻から終業時刻までの通常勤務することが義務づけている基本的な労働時間のことをいいます。

したがって所定労働時間は、各会社ごとにまちまちです。

これに似た用語で「法定労働時間」があります。

「法定労働時間」とは労基法第32条で定められている労働時間の上限のことをいい、1週40時間、1日8時間を原則としています。

したがって法定労働時間は、原則として各社同じです。

労基法では、原則として法定労働時間を上回る労働時間を設定することは禁止しているので、通常、所定労働時間は法定労働時間と同じか、これを下回ったものとなります。

その結果、所定労働時間が法定労働時間を下回った場合には、同じ残業でも、法定労働時間内で収まる残業と、そうでない残業の2種類の残業が生じます。

前者を通常、「法内残業」といい、後者を「法外残業」といいます。

例えば1日の所定労働時間が7時間の会社で3時間の残業が行われた場合、法定労働時間の8時間に達するまでの1時間は法内残業となり、それ以降の2時間は法外残業となります。


2.残業時間とは

上記残業に費やした時間のことをいいます。


3.残業代とは

上記、残業の対価として支払われる賃金のことをいいます。

その計算方法は、法内残業と法外残業とでは異なります。

@法内残業の残業代単価の出し方

就業規則や労働契約等により合理的な範囲内において任意に定めることができます。

したがって、一定率の割増が義務づけられているものではないことはもとより、時間単価の計算等についても実際の給与額と関係なく一律○○円としても差し支えありません。

ただし、こうした定めがない場合には実際の給与を時給換算した額をもって残業単価とするのが行政上の取扱いとなっています。


A法外残業の残業代単価の出し方

法内残業と異なり、法外残業の残業代単価については、労基法第37条でその計算方法が詳細に定められています。

労基法は強行規定なので、労働者本人の同意の有無に関わらず、これに反した方法で計算した場合には違法とされ、罰則が科されることもあります。

実際、労基署等の調査でも最重点事項としてチェックを受けるところですので、十分に把握しておいた方がよいです。

具体的な計算方法は以下のようになります。

法外残業代単価=通常の労働時間の賃金×1.25以上

※「通常の労働時間の賃金」とは時間で払われる場合にはその額、月で払われる場合には月(平均)所定労働時間数で割った額をいいます。


B法外残業代単価計算時に除外できる賃金

単価計算に際して除外できる賃金については法律により定められている以下の7種類に限られ、これ以外の賃金は全て含めて計算しなければならないとされています。また以下に該当していても、特に条件もなく一律に支給される手当は含めるものとされています。

除外できる賃金:

家族手当、通勤手当、別居手当、子女教育手当、住宅手当、臨時に支払われた賃金、1ヶ月を超えるごとに支払われる賃金



C法外残業単価計算の具体例

前記A、Bの説明に従って具体的に計算してみましょう。

事例:

基本給が20万円、家族手当が3万円(妻分2万、子1人分1万)、住宅手当が1万円(全員に一律支給)、通勤手当が1万円で、1ヶ月の所定労働時間が170時間の労働者が法外残業を行った場合の残業単価

1時間あたりの残業単価は

(20万(基本給)+1万(住宅手当))÷170×1.25=1544円となります。

※計算に際して家族手当と通勤手当は不算入ですが、住宅手当は一律支給なので算入します。


4.実際に残業をさせる場合の注意

残業時間や残業代について論ずる以前の問題として、その残業命令が合法的なものであるかどうか、という問題があります。

法的に違法とされる残業については、労基法違反を問われることはもとより、労働者に命じたり、拒否されても強制したり、懲戒処分の対象としたりすることはできません。

残業命令を合法的なものとするためには少なくとも、以下の3つの条件を満たす必要があることを知っておきましょう。


@労働契約の一事項として、残業に関する取り決めがされていること。

労働者を雇った場合、会社は当然に残業を命ぜられるわけではなく、そうした取り決めがあって初めて可能となります。

この取り決めは口頭でも足りますが、多くの会社では残業命令に関するトラブルを回避するため、就業規則や雇用契約書等に「会社は業務の都合により残業を命ずることがある」といった規定を設けています。


A36協定の締結と監督署への届出がされていること。

労基法上、法外残業は罰則付きで禁止されていますが、会社と過半数労働組合又は過半数代表労働者との間で時間外労働に関する協定(36協定)を締結し、これを所轄の労基署に届け出た場合には、法外残業をさせても罰則を科さないとしています。

したがって、法外残業が予定される場合には36協定を事前に締結し届け出ておく必要があります。

なお、法内残業のみしかない会社については36協定は必要有りません。


B残業が、@の残業に関する取り決めに従って行われたものであること。

以上の2項目をクリアしたならば、@の残業に関する取り決めに従ってなされた残業命令は原則として有効になり、その命令に従って行われた残業は法的に有効となり残業代の対象となります。

また、正当な理由なくこれを労働者が拒否したような場合には、懲戒処分等の対象となります。

上記の条件を満たしていない場合はもとより、満たしていたとしても、命令もされていないのに労働者が勝手に行った残業、いやがらせのための残業など内容に問題がある場合には違法・無効とされることがあります。

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